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映画「この世界の片隅に」公式サイト

レポート

片渕須直監督&町山智浩さんトークイベント【全文書き起こし】

2016.12.09

去る11月30日、テアトル新宿で大盛況のうちに終了した、片渕須直監督と町山智浩さんのトークイベント。ご好評にお応えして今回特別にトーク内容を全文公開させていただきます!おふたりの濃密な30分間をあますことなくお楽しみください。
 
 
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※上映後のトークショーでしたので、ネタバレを含みます。
ご鑑賞前のお客様はご了承の上ご覧くださいませ。
 
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◆町山智浩(以降、◆町山)「片渕監督をお呼びしますので、みなさん拍手でお迎えください。片渕監督、よろしくお願い致します。」
◇片渕須直(以降、◇片渕)「片渕です。よろしくお願いします」
 

◆町山:劇場増えてるそうですね。
◇片渕:そうですね。はじめ63館からはじまったんですけど、いまの段階で82館ですかね。また来週になると5館くらい増えたりします。最終的に160弱くらい予定が入っている。最初から2.5倍以上にはなると聞いているんですけど。(その後、累計上映館数は190館に増)
◆町山:すごいですね!ブロックブッキングで全国一斉300スクリーンで公開!みたいな最近の興行とは逆の方向で(笑)
◇片渕:最初の段階で信用が無かったから(笑)
◆町山:僕、今回(鑑賞が)4回目で。
◇片渕:そんなにご覧いただいて・・ありがとうございます。
◆町山:新しい発見が、毎回観るたびにありますね。情報量をつめこみ過ぎというか(笑)
◇片渕:(タイトルが)『この世界の片隅に』だから、まず世界というものがちゃんと描かれてないといけないかなと思って。世界っていろんなもんが集まった集合体でできてるから、なるべく自分たちでわかったことはみんな詰め込んじゃえという感じで作っちゃったので。
◆町山:パンフレットにはかなり説明があるんですか?
◇片渕:多少・・(笑)たぶん全貌は自分以外、誰も知らないんじゃないかな。
◆町山:これはだって1冊これぐらいの(厚みをジェスチャーしながら)本にまとめないと。
◇片渕:なんかそういうのを出そうと思ったんですけどね。却下されました(笑)
◆町山:どっか出版社がやったほうがいいですよ!まあ・・あの映画秘宝でも・・(会場笑)

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◆町山:たとえばですけど、純綿(じゅんめん)という言葉が出てくるんですが、お客さんわかります?
◇片渕:ス・フ(ステープル・ファイバー)とかもわからないでしょうね。当時使われていた言葉が、そのまま無責任に説明せずに出てくるんですけど。それは原作がそもそもそうだったんですが。僕らも、こうの史代さんの原作に書かれている、どこだか全然知らない広島の町やいろいろなものを読み解いていったんですね。読み解いていった結果、冒頭に出てくる(主人公のすずさんが)風呂敷包みを背負って歩いていた町が、いま平和記念公園になっている爆心直下から近い場所だったとわかったんです。うちの妻は、僕が原作を読んでいて急にそれが分かった瞬間に大声で叫んだのを今でも覚えていて。そういう発見をしていって、あれは一体なんだったのかな?と自分で紐解いていくことで身になります。驚きはまだまだ原作にはいっぱいあると思いますし、映画も多少そうなっていたら嬉しいなと。
 

◆町山:観るたびに僕、泣くところが違うんですけど。今回気が付いたのは、すずさんがいつも寝る時に天井板の木目をなぞるんですね。嫁入りした後も天井板の木目をなぞるんですけど、腕を無くした後、天井を見ると天井板がないんですよね。
◇片渕:ないですね。しかも本人布団にくるまって寝ていますもんね。
◆町山:天井板がなくなっている理由は説明されないんですけど、お客さん、気が付きました?天井板がなくなっているの。
◇片渕:多少気が付いているみたいで(笑)
◆町山:天井板がない理由がその後のシーンでわかるようになっていますね。
◇片渕:原作には書いてあるんですが、アメリカのM-69焼夷弾というのがあって、それは屋根瓦を貫いて天井裏で引っかかって、そこで火がついたナパームを発射する仕掛けになっているんですね。
◆町山:消火できないんですよね、天井裏だから…
◇片渕:できないですね…なので天井板を外しておくと、床まで落ちてくるからまだ消せるんじゃないのかなっていうことで、結構日本では対策としてやられてて、呉の鎮守府の海軍の施設なんかでも木造家屋はそれをやるっていう指令が出ていたというのも文書で読んだりしたんですけど。だから確実にあれをやっていたみたいですね。写真も残っていますし。
 

◆町山:最初の方の木目をなぞるシーンがその伏線になっていって。他にもいろんな伏線がすごく複雑に絡み合っていて、例えば軍艦が港に入って、水兵さんが町にバーッとあふれると、周作さんが「譲らなきゃいけんのう」って言いますよね。あれがその後、水原さんの…(笑)
◇片渕:言葉でいうとそういうことになってしまうんですけども(笑)
◆町山:生々しくなってしまうんですが(笑)あれはそういうことですよね?
◇片渕:実は僕はあんまり映画的なレトリックなものでなるべく感じないようにはしようと思っていて、むしろすずさんの生活臭みたいなものをドキュメンタリーみたいに切り取っていくのが、自分の中でのポリシーだったものですから。もしそうなっていたとしたらひょっとしたら偶々だったかもしれません。でも人生ってそういう偶々っていうのありますよね。あの時言ったこと行動したことが今に繋がっている気が後からしてくることって。たぶん周作さんのそれはそういうことだろうなと思います。
◆町山:非常にエロチックで、観ていてこうムズムズしてくるような…(笑)それとですね、監督の過去の作品『アリーテ姫』『マイマイ新子と千年の魔法』そして今回の作品、まるで三部作のような繋がりを感じられるのですが。
◇片渕:そうかもしれないですね。女の子の創造力三部作(笑)
◆町山:それは意図的に?
◇片渕:女性作家が描くものとかの方が、実は気持ちとして引っかかりやすいんですよね。そうすると必然的に主人公が女性になっちゃうことが多かったりして。男の人が描いたものってあまりに腑に落ちすぎる感じがして(笑)。女の人が描いたものの方が客観的に観れるというか。人間ってこういう見方があるのかと。それが性に合ってる気がするんです。アニメーションは創造力のところから出発してるものなので、そういうところを込めたくなって。だから結果的に三部作になってしまったんですが、次またやったら四部作ですね(笑)

 
◆町山:三つの作品で段階的に発展していますね。たとえば草花の描き方。だんだん深い意味を持つようになっていきますよね?
◇片渕:そうですね。『アリーテ姫』の時はヤギが草を食べてるぐらいだったんですけど、舞台が日本に移っていくにつれ自分たちの身近な草花を登場させることが増えてきて、それが意味を持つようになっていったんですね。『この世界の片隅に』でいうと、たんぽぽがすごく大事だなと思っているんです。ただ『マイマイ新子』をご覧になった方は思い出していただけると良いのですが、エンディングタイトルのラストカットがたんぽぽだったんです。すごく正直に言いますが『この世界の片隅に』の予告編の間、『マイマイ新子~』のたんぽぽの絵をそのまま咲かせてたんです(笑)
◆町山:えっ、そうなんですか!?(笑)
◇片渕:映画として完成させるまでに、ちゃんとこの作品用のたんぽぽにしたんですけどね。そういうこともあって、そのまま繋がっているような感じがするんです。

 
◆町山:たんぽぽはすずさんの象徴ですか?
◇片渕:そうですね。すずさんが映画の中でも、自分は広島から来た黄色いたんぽぽで、呉の人たちは白いたんぽぽっていうような意味合いで話してますね。だから黄色いたんぽぽは摘まないで残しておいて欲しいって。そこからたんぽぽの綿毛の話が出てきて、コトリンゴさんが「たんぽぽ」というエンディングテーマを作られたんです。これは注文したものではなくて、どちらかというと僕は島崎藤村の「椰子の実」をイメージしていて。ただ「椰子の実」は離れた故郷を思う詩だから、そうでなくて、辿り着いた場所に根を下ろすものにしたいねと。そしたらコトリンゴさんがたんぽぽの種の歌を作ってくれたんです。
◆町山:繋がっているんですね。
◇片渕:繋がってくる感じがしました。
◆町山:『マイマイ新子~』から繋がっているのは、もうひとつ、鳥の描写、白鷺ですね。今回はすずさんの心のようなものとしてでてきますね?白鷺は江波特有のものですか?
◇片渕:田んぼのある場所には大体いるんですけど、『マイマイ新子~』原作のエピソードで日清戦争に従軍経験のあるおじいさんが大陸でこんな鳥がたくさん飛んでる風景をみたと言うところがあって、それで出したんですけど。今回の場合はすずさんの生まれ故郷である広島の江波って、本川の河口なんですけど本当に鷺たくさんがいるんですね。カモメよりいっぱいいて、自分でも行ってびっくりするくらい岸辺バーッと白い鷺で埋まってたりして。また、こうの史代さんの漫画原作のページにちょっとホワイトスペースがあると必ず鳥が飛んでいるんです(笑)
◆町山:そうですよね(笑)
◇片渕:それがすごく特徴的だし優雅な感じがしたんで、今回はできるだけ隙間があったら映画でも鳥を飛ばしてみようと思って(笑)色んな種類の鳥が飛んでいると思います。

◆町山:それと昆虫ですね。トンボもシオカラトンボと赤トンボとオニヤンマと種類があって、『マイマイ新子~』でも昆虫を効果的に使ってましたよね?
◇片渕:モンシロチョウとかね。本当は今回もモンシロチョウを使うつもりで、パイロットフィルムの時にはモンシロチョウいれてたんですけど、後で3月19日は気温が上がってなくてモンシロチョウは羽化していないっていうことが分かりまして…(笑)
◆町山:すごい実証主義ですね(笑)
◇片渕:ついでに言うとツクシも生えていないということも分かったんで、パイロットフィルムとは大分画が変わってしまったんです(笑)
◆町山:当時の天気を全部調べられたんですよね?気温と。
◇片渕:3月20日から気温が上がるんですけど、19日はまだ薄ら寒いんですよ(会場笑)
◆町山:そこまでこだわるんですね(笑)
◇片渕:でもそれぐらい本当にあった世界の中にすずさんにいて欲しかったんです。
◆町山:天気は曇天とか雨天とか全部現実通りなんですね?
◇片渕:ほぼその通りだと思います。
◇片渕:雲の出方とかは多少違うとは思いますけど記録に残っていて、高曇りとか。高曇りってなんだろうねって言いながら描いております。
 

◆町山:説明がなくて、観ただけではわからないシーンでは、B29が海に落下傘がついたものを落としてきますよね? それが何かは説明されない…
◇片渕:そこはカットしちゃったんですよ。
◆町山:あ、そうなんですか。
◇片渕:カットして説明が無いんで、そのうちまた作んないとダメなのかなとか思ってますけど…(会場笑)
◆町山:でもその後病院で掃海をしていた兵士が負傷していることで、繋がってくるんですよね。
◇片渕:掃海艇が大破しちゃったんですね。
◆町山:彼はB29が落としていった機雷を除去していたんですよね?
◇片渕:そうです。実は、呉港の中に機雷が撒かれて大和がそこから脱出するんですね。で、どんどん瀬戸内海を東から西の方へ移動していって下関まで行ったら日本海に出られて大和は脱出できるんですよ。その目の前で下関の関門海峡に機雷が落とされるので、大和は行き場がなくなって航空写真に撮られている三田尻沖になるんですよ。三田尻沖っていうのが『マイマイ新子~』の舞台の沖合いなんですけどね。
◆町山:それも繋がってくる。
◇片渕:そうなんです。『マイマイ新子~』の最初の方で千年前のお姫様・諾子ちゃんっていう舟でやってきたところに大和が泊まっているんですよ。
◆町山:そうなんですか!
◇片渕:あの辺の海域、かなり詳しくなってしまって。(会場笑)実際に船を出してもらって、大和が泊まっていた海域まで行ってみたりもしたんですけど。でも全然映像に反映されない(笑)
◆町山:直接は映像になっていないけれど調査が、作品のリアリティを作っていると思います。話を三部作の関係に戻しますが、『アリーテ姫』は閉じ込められてるお姫様が外の世界を想像するお話でしたが、『マイマイ新子~』の昭和三十年の子供たちが千年前のお姫様の生活を想像で体験するのと繋がってきますよね。
◇片渕:そうかもしれないですね。
◆町山:そして『この世界~』で、現代のわれわれが70年前のすずさんを体験する。
◇片渕:僕は率直に言うと『この世界~』の方が『アリーテ姫』に直結していると思っていて、もう一回同じテーマのリフレインでやっているつもりがあるんですね。本来だったらアリーテ姫っていう人が、絵に描いたようなお姫様に変えられて、そこから自分の力だけで魔法を解いて元の自分に戻るかってお話しなんですけど、そういう意味でいうと今回は浦野すずちゃんが北條すずさんに変えられるっていうところから、同じ名前のままいかにそこに自分を取り戻していくかっていうところを思いつつやったりしました。
 
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◆町山:本当に三作が非常に有機的に繋がってくる気がします。『マイマイ新子~』では最初、新子たちは子供のユートピアにいるのに、のちにヤクザや娼婦のいる飲み屋や色街に入ってく。『この世界の~』でも、世間知らずのすずさんが遊郭に迷い込みますよね。
◇片渕:この世界の中に女性にとって忌み嫌われる空間がもしあるとすれば、そういうところに入っていってしまうんですね。
◆町山:遊女のリンさんがその後どうなったか、1回見ただけではちょっとわからないかもしれないですが、セリフの中でちらっと言ってるんですね。朝日町が全焼したと。
◇片渕:あそこは建物がほとんど燃えてなくなってしまったんですね。
◆町山:そういえば、アメリカにも朝日楼という遊郭があったんですよ
◇片渕:あ、そうなんですか。
◆町山:「House Of The Rising Sun」という歌にもなっている、ニューオリンズに実在した娼館で、もともとフランス語で「朝日楼」といったそうです。たぶん遊んだあと朝日が昇るから、後朝の別れみたいな意味で付けられた名前なんだと思うんです。
◇片渕:呉なんかも明治の中ごろに人工的に作られた町で、朝日町の遊郭もデベロッパーみたいな人たちがいて開発として作られてるんですね。なので、そうやって人工的に付けられた名前かもしれませんね。
 

◆町山:少女たちが町で縫い物(千人針)をしているのも、意味が分からない方が多いでしょうね。みなさんで調べていただいたほうがいいかなと思うんですが。
◇片渕:戦争中っていまから見たらわからないこともいっぱいあるし、いま僕らがいろんなことやっていることが、遠い未来や昔の人が見たら分からないだろうし、なんで四角い箱(スマートフォン)を耳に当てているんだろうとか。
◆町山:ジリリンって電話が鳴るってなに?とか(笑)
◇片渕:TVのダイヤル回すってなに?とか(笑)
◆町山:たとえば新聞紙をお母さんがクシャクシャとやっているシーンがありますけども、あれは落とし紙を作っているんですよね。
◇片渕:まだ僕らが子供の頃はやっていました。
◆町山:そうですね。お尻を拭く紙なんですよ。
◇片渕:昔は水洗式じゃないんで、流れなくてもいいんですよね。インクでお尻が黒くなるんだけど(笑)


◆町山:あと一番わからなかったんじゃないかなと思うところですが、終戦の日に朝鮮の国旗である太極旗が小さく上がるところで、原作ではあの旗を見てすずさんが私たちも暴力でほかの国を従えていたんだ、と。今まで空襲の中でアメリカ軍の暴力と戦っていると思っていたけど、と気づくシーンですが、あそこは映画でセリフが変えられていますよね?
◇片渕:それまでのすずさん自身が、朝鮮の方に暴力を振るっている場面があったか?というと無いんですよ。そういうところを彼女は目撃もしていない。なのに、すずさんが突然そんなことを言っても、拳を振り上げて戦争反対と言っている姿勢とあまり変わらなくなっちゃうような気がして。僕はもっとすずさんが実感できるもので、自分たちが振るった暴力のことを認識するべきだと思ったんですね。彼女は毎日食卓を整える主婦なので、食べ物がどこから来ていたのかということを知っている立場なんです。だから自分たちがやってきたものを、食べるものを通して本当に根拠のあることとして言えるのではないかなと思ったんです。それと、できるだけ今回の映画では、現代の我々から見た理念みたいなものを、すずさんの上に重ねないようにしようと思ったので、そういう意味でも、彼女は当時の食べていたものから、自分たちの行ったことが身に沁みてしまうとうことにしたかったんです。
◆町山:当時日本では、朝鮮米とか台湾米が配給されていたんですけど、それは朝鮮や台湾の人たちから米を搾取していたんですよ。
◇片渕:戦後は戦争やったら海の向こうから米を送ってこれなくなったという反省があって、米の自給率を100%にしようとするんですが、戦時中はそうではないんですよね。
◆町山:台湾も朝鮮も日本の領土だったので食糧難は同じ状況だったのに、台湾や朝鮮の人のお米を取り上げて日本に送っていたんですよね。
◇片渕:しかも昭和19年は、朝鮮の米が不作なんです
◆町山:大水害か何かで。
◆町山:朝鮮の人も飢えているのにそれを取り上げていたんですね。そういう実感的なことでしか、すずさんは言わないと。
◇片渕:あと満州の大豆ですよね。
  
 
◆町山:ほかにもいくらでも聞くところがあって、情報量が多いんですね・・(笑)お父さんがギター持ってますよね?
◇片渕:あれは周作さんのギターですね。
◆町山:そうなんですか。あれも、ちらっと見せるだけで、どういう人か分かりますよね。
◇片渕:もともとは、こうの史代さんのご親戚で海軍軍法会議所の録事だった方がいらっしゃって、取材ノートを見せてもらったらその方の趣味がギターと書いてあったんです。なので、すずさんがお嫁に行った時に絵を描かなくなったのと同じように、旦那さんも音楽を封印してしまったんだと勝手に思うようにしちゃったんです。
◆町山:趣味などが抑圧されている状況が、あのギターだけで伝わってきますね。
◇片渕:それと同時に結婚して大人になるって、子供の頃や若い時のものを何か捨てて、現実的に生きるということで、それがすずさんにとっては絵だったりするのと同じように、周作にもあるといいかなと思って。それは映画を見ても絶対わからないと思うんですが、作り手の勝手な思いなので。なのでギターは弦が張ってないんです。
◆町山:あと、ゴッホと絵との関係とか。それに3作とも麦畑なんですよね。
◇片渕:あ、なぜかそうですね。

 
◆町山:ああ本当に聞きたいことは尽きないんですけど、時間が来てしまって。最後に、これから海外の人達にこの映画を観ていただくことになると思うんですが、どんな風に観てもらいたいと思いますか?
◇片渕:戦争っていうものが、たとえば当時の日本に非があっただろうといわれれば、それは甘んじて受け入れなければいけないけれど、70年前に起こったことに関して、誰が被害者だったのかとか、どんな犠牲があったのかと言われれば、それはみんな同じ立場に立てるんじゃないかと思うんです。庶民ですよね、戦争によって虐げられてしまった人達の気持ちはみんな共感できるんじゃないかと。アメリカでも以前少しだけプロモ―ションしたこともあったのですが、その時はおおむね理解していただけているようでした。

 
◆町山:最後にちょっとひとつだけ。僕、今回観直して、ヴィットリオ・デ・シーカ監督の『ひまわり』を思い出したんです。前半は徹底的に夫婦のコメディで、後半は戦争の悲劇になっていくコントラストがすごく似ているなと。ちゃんと笑わせるところも。2つとも夫婦が夫婦になっていく話だったりして。それに今年は前半で『サウルの息子』というハンガリー映画がありまして、それも戦争の悲劇を描いていて最後ほんのちょっとだけ救いがある映画だったんですけど、ご覧になりました?
◇片渕:今年どころかこの2年間全然観ることができなかったんです。でも『マッドマックス』(怒りのデス・ロード)は観ましたよ!(会場爆笑)
◆町山:『この世界の片隅に』の編集は『マッドマックス』に非常に近いところがありますよ!
◇片渕:今度『マッドマックス』と『アリーテ姫』も観比べてみてください。すごい近いですよ(笑)
◆町山:まだいくらでも話したいことがあるんですが、終わらせないと怒られますんで。
◇片渕:じゃあ裏で続きを(笑)
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写真撮影中も話が止まらないお二人に、会場からは笑みがこぼれていました。

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