『この世界の片隅に』公開記念!ネタバレ爆発とことんトーク! レポート
2016.12.08
こんにちは。制作宣伝の宮村です。
11/20(日)、東京 新宿のロフトプラスワンにて《『この世界の片隅に』公開記念!ネタバレ爆発とことんトーク!》と題したトークライブが行われました。
出演は片渕須直監督、原作者・こうの史代先生、真木太郎プロデユーサー(以下、真木P)、黒村径子役・尾身美詞さん、北條サン役・新谷真弓さん、アニメ・特撮研究家の氷川竜介さん、アニメ評論家の藤津亮太さんという豪華なメンバーです。
トークは3部構成で、第1部は片渕監督、こうの先生、真木Pの3人が登壇し、作り手側から『この世界の片隅に』を語ります。しょっぱなから真木Pのオフレコ話が飛び出し、片渕監督が「今回一番危険なのはプロデューサーだったとは」と苦笑しながらトークはスタート。制作が軌道に乗る前の動きや、クラウドファンディングに至るまでの経緯まで進んだところで、支援者向けに送られた《すずさんの手紙》についてのウラ話に。こうの先生の「最初は私が宛名も書くのかなと思っていました」との発言には会場が笑いに包まれました。呉市の消印が押されていたのは、一旦呉市の支援者に送り、そこから支局に持ち込んでいただいたという事情や、差出人の名義の問題で不達の確認ができなかった事などが明かされました。さらに片渕監督が「夏、秋、冬、春と送られてくるという内容でしたが、4月を最後に途絶えてしまうんです。その理由を本編の内容と合わせてみると、とても悲しいんです」と解説すると、会場からため息が。このほか、真木Pからは、海外での公開についての説明も行われました。
第2部は、真木Pに変わり、径子役の尾身美詞さんと、サン役の新谷真弓さんが登壇。演じた側からの『この世界の片隅に』が語られました。
作画監督の松原さんの紹介で新谷さんが出演する舞台を見た片渕監督は、『この世界の片隅に』の広島、呉の方言指導を新谷さんに依頼。映画1本分のセリフをすべて新谷さん1人で収録した「方言テープ」(実際はCD)を制作し、アフレコするキャストにガイドとして渡しました。ただし、各人の演技に影響を与えないようにイントネーションがわかる程度のフラットに話してもらったそうです。ですが、片渕監督にはサンさんの声だけは芝居がついているように聞こえ、「サンさんがそこにいる!」と感じ、すぐに新谷さんにお願いしたのだとか。新谷さんは自分の好きなセリフとして「あれをよろこんで召しあがる楠公は、ほんまの豪傑なんじゃろうねぇ。」をその場で披露。会場から拍手があがりました。
尾身さんは、『この世界の片隅に』の原作の大ファンで、今回は別の役でオーディションを受けたそうです。そのオーディションの最中、もしや?と思った片渕監督は尾身さんに「径子さんのセリフを話してみてもらえませんか」と提案。尾身さんが原作マンガを読みながら録音した声が、制作中の映像にピッタリとはまったのを見て、径子さん役をお願いすることになりました。尾身さんの演じた《怖いお義姉さん》は、音楽のコトリンゴさんにも強烈なインパクトがあったとか。片渕監督が尾身さんのマネージャーさんから「よく尾身から新しい引き出しを開けてくださいました。なぜ尾身の中にあんなものがあるとわかったんですか?」と聞かれた話や、リクエストに応えての「なんね!そのつぎはぎだらけのモンペは!」のセリフの披露に、会場は大いに沸きました。
さらにプライベートで会場にいらしていたリンさん役の岩井七世さんも飛び入りで参加。アフレコは、のんさんと一緒に行われたそうですが、他の出演者の声が入ったあとだったので、収録は「かなりの緊張でした」とのこと。片渕監督の「リンさんはすずさんの役が決まらないと選べない役どころだったので最後まで決まらなかった」との解説には、「それは周作さんの好みの女性ってことですか!」と新谷さんがツッコミを入れると、会場は大爆笑。こうの先生は尾身さん、新谷さん、岩井さんが演じられたキャラクターについて感想を述べます。「アニメになった径子は、ちゃきちゃきした動きと声ががすごく合っていて、そこが可愛らしくって、家に連れて帰りたくなりました」「サンは、声を聞いて若いなって思ったんですが、私が老け顔に描いただけで実際は若いんですよね。円太郎さんとバランスが取れていて良かったです。『みんなが笑ろうて暮せりゃええのにね』ってすごくまじめにしゃべってるのに、その後がギャグのシーンになるのが気の毒で、そこが面白かったです」「リンはとても澄んだ声で良かったですね。でもこんなかわいい声の花魁がいたら、みんな夢中になって来ちゃうかなって感じがしました」と、こうの先生ならではの感じ方は、とても興味深いものでした。
第3部にはアニメ・特撮研究家の氷川さん、アニメ評論家の藤津さんも登場。『アリーテ姫』以来の片渕作品の追っかけという氷川さんは、「(片渕監督の作品が)ようやく同時代的に評価されて感慨深いです」と挨拶。公式ガイドブックを手がけた藤津さんは「(映画が)当たってほしくて本を作ったんですけど、いい数字が出ているのは本当に嬉しいです」と話します。氷川さんが〈『この世界の片隅に』のキャラクターの名前は元素記号に基づいて付けられてる〉とSNSに挙がっていることを紹介すると、こうの先生自ら「系統だって名前を付けるのが大変で、手元にあった元素の周期表を見ながら考えてました」と解説する一幕もありました。藤津さんが「片渕監督が、丹念にファクト(事実)を積み重ねて作品を作りだすスタイルにも、理系を感じます」と述べると、「《この世界の片隅》を描くのに、全体像が見えないとまずいかなというのがあったんです。それでいろいろ調べたものを積み重ねていきました」と、片渕監督も応えます。
つづいて、登壇者全員で『この世界の片隅に』をどう伝えていくかも話し合われました。色々な意見が出ましたが、新谷さんの「まずは何も知らないまま見てほしいから、『ネタバレされたくなかったら早く見た方がいいよ』と勧めたい」という発言には、会場から大きな笑いと拍手が起こりました。
この後も時間が許されるまでトークは続き、プレゼントの抽選会も行われました。
3部の最後は、登壇者全員からお客様へのメッセージ。藤津さん「公開2週目の方が成績が良いということは、クチコミで伸びる映画だと思います。皆さんと盛り上げていきたいので、いっしょに頑張りましょう!」
氷川さん「この作品の中身については心配してなかったのですが、興行がどうなるか見守っていました。幸先の良いスタートで良かったと思います。なるべく大勢で、なるべく長い期間、何度も見ていただきたい映画です。これからも盛り上げていきたいので、皆さんも応援よろしくお願いします」
新谷さん「唯一無二の映画だと思います。原作マンガとは、姉妹のような、親子のような関係で、それぞれ魅力のある作品です。片渕監督は演技の説明をするときも、どうしてロマンチックなシーンになるのかを体系づけて説明をしてくれる、理系なイメージが先立ちます。でも、映画の為にいろんな情報を発信してきた監督が公開前の深夜に「ここまで頑張って来たんだから、ヒットしなくてもいいや」ってツイートを見て、実はロマンチストな方なんじゃないかなと感じました。この映画がヒットしてくれて良かったなと、もっといろんな人に観てほしいなと思います。これからもどうぞよろしくお願いします!」
尾身さん「私もこの作品が大好きですが、今日はたくさん、たくさんこの作品を愛している人たちが来てくれて、仲間になれてとっても嬉しいです。もっと、もっとたくさんの人たちに愛してもらえる作品だと信じていますので、もっと仲間を増やせるよう、目標はたかく、みんなでがんばりましょう!」
ここで、観客として遊びに来ていた岩井さんも再登場。更に同じく来場されていた、方言指導や憲兵などを演じた呉出身の俳優・栩野幸知さんからも一言。
岩井さん「この映画は観たあとしばらく経ってからも、思い出しては内容をかみしめたりできる面白い作品です。ぜひ映画館でご覧になって、いろんな人と感想を話していただけると、私も嬉しいです。みなさん、一緒に広めていきましょう」
栩野さん「憲兵です。実は今回、6人分の声をやっています。探して下さい。ワシゃあ広島じゃけぇ、ほんで呉じゃけぇ。この映画を一番愛しとるけぇ。よろしくお願いします!」
こうの先生「家でコトリンゴさんのサントラを何度も聴かせていただいているのですが、あるとき《みぎてのうた》を聴いている時に、ふっと『これは私の歌だ』と突然思ったんです。私はもう、この作品からは離れたなという感じがあったのですが、すずの人生はつづいていて、いろんな人と出会ったりして素敵なものが待っているように、この作品も映画になって私の手から離れたけれど、たくさんの人に観てもらって、たくさんの国に行って、幸せがたくさん待ってると感じています。この映画をずっと見守っていけたらと思っています。みなさんも、この作品に出会った新しい仲間として、この映画のことをよろしくお願いします」
片渕監督「公開初日だったかな、こんなに味方が多い映画は無いような気がしてて、制作スタッフの前で《負ける気がしない》って言ったことがあるんです。なにかと戦ってるわけでもないんですけどね。なにかすごくまろやかな感じがある中で、《負ける気がしない》感じがあって。この映画は自分が関わった作品のなかでも、ほんとにいい雰囲気で進んで行っていて、これからもそういうふうにありたいなと思いますので、これからもどうぞよろしくお願いします」
真木P「このイベントが決まったのは、当然だけどずっと前なんです。監督は自信があると言ってたし、僕も中身に関しては自信があったんだけど、こういうふうに、幸せに今日を迎えることができるかは分からなかったので、素直に喜びたいと思います。みなさんのおかげでここまで来ることができました。良い興行成績と、みなさんからいたただいている素晴らしい反応が、日々の糧になっています。1日でも長く上映したい、1人でも多くの人に観てもらいたいと思っています。今日は本当にありがとうございました」
そして、真木Pの音頭で、『この世界の片隅に』が無事に公開されたことと、これからのヒットを祈願する3本締めでイベントは終了しました。