スタッフルームだより#14
2016.02.09
制作プロデューサーの松尾です。
いつもスタッフルームだよりを読んでくださりありがとうございます。
「冬の記憶」から始まったメイキングレポート、もうしばらく続けたかったのですが、完成に向けて現場の動きも激しくなってきましたので、今回からはスタジオの動きをスナップ写真で紹介していきます。
それでは広島弁が好評な監督助手の三宅君に代わります。
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社内動画スタッフの藤井さんが、クイックチェッカーという機械ですずさんの細かい動きをチェックしよってです。
繊細な動画の積み重ねが、1本の映画の完成に着実に近づいて行きよります!
スタッフルームだより #13
2016.01.29
最近「空気つぎ」が広島弁じゃゆうことを知って衝撃を受けた、監督助手の三宅です。今回は「色彩編 その3」をお届けします!
ここに2人のすずさんがいます。左は昭和8年冬のすずさん。右は昭和10年夏のすずさん。夏のすずさん、こんがり日焼けしとりますね! 肌だけではなく服装も、夏のすずさんは冬に比べてかなり彩度が高く塗られています。同じ作品でこんなに色が違うてええんでしょうか? 秘密は背景にあるみたいですよ。
それぞれのシーンの背景美術の上に立たせてみました。
冬のすずさんからは、ツンと冷えた空気の中に注ぐ真冬の鈍くてやわらかい光を、夏のすずさんからは、ギラギラと照りつける太陽に照らされた鮮やかな思い出を感じて頂けるのではないでしょうか!
この作品では、シーンごとの背景美術に合わせてキャラクターの色を作っています。これは、かなり豪華な作り方なんだそうです!
片渕監督と色彩さん、それに美術監督さんも加わって色を作っているところです。この色チェックでは、何とキャラクターの色に合わせて美術の色が決定しました。
小物に関しても、1カットずつ片渕監督が色をチェックして決めています。こんな細かい小物の一つひとつまで、監督の目が入っているんです。
キャラクター・小物の色と背景美術の色を一緒に決めていく過程は、個々の物を塗っているというよりは、まるでその瞬間の空気に色を塗っていくようです。こうして各シーンの色が出来上がり、『この世界の片隅に』は色で満ち溢れていきます。
皆さんのお気に入りのシーンはどんな色彩で満ちるのか……どうぞご期待下さい!
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会議室の片隅に、誰かが編んだ草鞋が……。これももちろん資料です!
スタッフルームだより「色彩(仕上げ)編」は今回でおしまいです。次回もお楽しみに!
スタッフルームだより #12
2016.01.25
『この世界の片隅に』監督助手、広島出身の三宅です。
今回は「色彩編 その2」をお届けします。
[画像1:スーパーの盆灯籠売り場]
皆さん、広島の「盆灯籠」って知っとりんさるでしょうか??
広島では、お盆にお墓の前に竹と紙で作った灯籠を飾るという風習があります。色紙や金紙を使った派手な灯籠でお墓中が埋め尽くされるので、とっても華やかなんですよ!
通常は色とりどりな灯籠ですが、初盆を迎えたお墓だけは特別に白一色の灯籠を飾ります。
実は『この世界の片隅に』にも盆灯籠が登場するシーンがあります。さて、この昭和10年の盆灯籠、一体何色で塗れば良いのでしょう?
[画像2:原作の盆灯籠]
とあるウェブ百科事典によれば、昭和40年代までは没年にかかわらず白いものが一般的であったと書かれています。これで基本の色はわかったけれど、装飾部分に当時から金紙を使っていたのかがわからない。
そこで、昭和21年生まれの母に電話で聞いてみることにしました。
[画像3:資料用に買ってきた初盆用の灯籠]
「灯籠が白かった? いいや、昔からみな色紙じゃった思うよ」
金紙の有無について聞いたつもりが、なんと話が元から覆ってしまいました! その後も、戦前・戦中生まれの方々に伺ってみましたが、全員が「色はあった」とのこと。加えて「金紙は使われていなかった」「装飾は今よりも控えめだった」といった話も聞くことができました。自作していた家も多く、有り合わせの紙で作る場合もあったようです。
[画像4:盆灯籠を持つ十郎]
そうしてやっと、『この世界の片隅に』の盆灯籠に色が入りました!
戦前・戦時中の色についての資料は非常に少なく、こうして出来上がった色も学術的に絶対に正しいとは言い切れない部分があります。それでも、先入観を排して人々の記憶の中にある「色とりどり」な盆灯籠を塗れたことで、すずさんの見る世界が、私たちの世界にまた少し近づいたのではないかと思います。
[画像5:おまけ(新幹線で運びました)]
次回は、こうして丹念に作り上げたキャラクターや小物の色が、シーンの色になっていく過程をご紹介します。お楽しみに!
スタッフルームだより #11
2016.01.18
はじめまして!
『この世界の片隅に』監督助手の三宅です。広島からこの作品の制作に参加するために上京してきたオノボリさんじゃ!
というわけでスタッフルームだより11回目からは「色彩(仕上げ)編」。
すずさん達がどのように彩られていくのかを、広島人の三宅がご紹介します。
【画像1 制作フローチャート】
「仕上げ」さんとも呼ばれる色彩さんは、「動画」に色を塗って、「背景」の上に乗せられるように仕上げる人。専門用語ばっかりでやねこいが、要は「キャラクターに色を塗る」ゆうことじゃ!
ちなみに、「背景」に色を塗るのは色彩さんではなく背景さんです(前回までに紹介した「背景」にはすでに色が付いていましたね)。
【画像2 色チェック】
キャラクターの色を決める時は、あらかじめ完成している「背景」の上にキャラクターの立ち絵を乗せて、色を探っていきます。水彩絵具で塗られた背景美術の雰囲気に合うよう、キャラクターも淡くて柔らかく、繊細な色彩に仕上がっていますよね。
着物の帯締めや洋服のボタン……細かい部分の一つひとつにまで片渕監督の目が光り、『この世界の片隅に』のキャラクターたちに“色”が付いていきます。
【画像3 色チェック中の片渕監督と仕上げさん】
【画像4 色チェックが終わったばかりのすずさんとすみちゃん】
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皆さんは、戦前や戦時中の人達がどんな「色」を見よったのか想像したことがありますか??
なんだかモノトーンで薄暗い時代……そんなイメージを持っている人もいるかもしれません。でも実際は、やっぱり世界は色彩に満ちていたはずですよね!
次回の「色彩編 その2」では、すずさんの目を通して昭和初期の「色」を蘇らせる、そんなお話をお届けしたいと思います。お楽しみに!
【画像5 おまけ 今週のスタジオから】
スタッフルームだより #10
2016.01.08
こんにちは! 『この世界の片隅に』担当制作の鈴木がお送りするスタッフルームだより10回目。
今回は「美術(背景)編」その3として、実際の背景制作過程をご紹介したいと思います。見ていただくのはc-165の横川駅手前にかかる横川橋のカットです。
【原図】
このカットは先日の広島国際映画祭で上映されたので御覧になった方もいらっしゃると思います。実際に背景スタッフの作業工程を見ていきましょう。
【原図整理】
まずは、背景原図を基に原図整理を行います。
線を整えて、色を塗る前の線画の背景を完成させます。
【地塗り】
続いて、原図整理で完成した線画を、実際に色を塗る画用紙に転写します。
そして下地になる色を塗っていきます。
【背景完成】
細かい部分を丁寧に書きこんで完成! ここまでが、紙に手描きの作業です。
この後、スキャナーでパソコンに取り込んで微調整を加えていきます。美術監督が確認・修正したものに、片渕監督がOKを出せば完成です。
【おまけ セルを追加した背景】
キャラクターのセルと一緒に撮影された完成画面です
いかがだったでしょうか。3回にわたりお送りした美術(背景)編。背景スタッフも完成に向けて一生懸命がんばっています。引き続き応援お願いします。
それでは次回もお楽しみに!
スタッフルームだより #9
2015.12.25
どーもー!こんにちは!「この世界の片隅に」の制作進行の鈴木です。
スタッフルームだより9回目は、前回に引き続き「美術(背景)編」をお送りします。
美術編2回目の今回は『背景打ち合わせ』の様子をご紹介したいと思います。
レイアウトと同様、背景作業を始める前には打ち合わせを行います。
背景では、まず片渕監督と美術監督の林さんが全体像の打ち合わせをし、実際に作業を担当する背景さんには、林さんからカット内容の詳細を説明し、発注します。
【原図と設定】
打ち合わせの時、基本となるのは「原図」です。アニメーターさんが描いたレイアウトを元に背景で描かなければいけない所を確認します。その時、美術設定があるシーンについては美術設定とも照らし合わせて間違いが無いか?など細かい部分も確認します。
【資料のデータ】
片渕監督が集めた膨大な資料はフォルダ分けされ、ここでも参考にさせていただいています。
(片渕監督のイベントなどでご覧になった方も多いと思います。)
【ロケハン写真】
片渕監督が何度も広島でロケハンし、撮影した写真たち。こちらも細かくフォルダ分けして管理。数年分のロケハン写真も膨大な数です。
【美術ボード】
最後に一番大事なのが「美術ボード」です。
「美術ボード」とは、そのシーンの背景の色味や描き方などのお手本となる背景です。たとえば、主人公のすずさんがお嫁に行った北條家でも季節や時間帯が違えば、背景の色味や描き方などがシーンによって違ってきます。ですので、そのシーンを担当する背景の方に、見本となる美術ボードを参考にして、背景を描いていただいています。この「美術ボード」を描くのが美術監督です。まず片渕監督と美術監督が打ち合わせを行い、美術監督が美術ボードを描いて、監督チェックでOKになったシーンから、実際にそのシーンを担当する背景担当者との打ち合わせを行うという、2回に分けての打ち合わせを進めています。
【完成した背景】
完成した背景は一枚ずつ透明な袋に入れて大切に保管されています!
次回は「美術(背景)編」のラスト、実際の背景制作 をご紹介します
お楽しみに!
スタッフルームだより #8
2015.12.21
みなさんはじめまして!
『この世界の片隅に』制作進行の鈴木です。
スタッフルームだより、8回目からは「美術(背景)編」をお送りしたいと思います。
まずは、制作のフローチャートを見てみましょう。
「背景」は、レイアウトが完成後、原画・動画・仕上げ作業と平行して作業していきます。
各担当原画マンの描いた『レイアウト』を『背景原図』として、キャラクターなどアニメーターさんが原画で描くもの以外の、風景や室内など文字通り人物の背景となるものを描いていきます。
背景は、今ほとんどのアニメ制作の現場で、パソコンを使ってデジタル作業で描いていますが、『この世界の片隅に』の制作現場では、昔ながらの手描き作業で描いています。
美術監督の林さんの机です。美術ボードや背景が壁一面に貼られています。
絵の具はポスターカラーを使用。絵筆はいろいろな種類のものを使っています。
『この世界の片隅に』ではポスターカラー以外に、クレパス・色鉛筆・水彩用絵の具・エアブラシなども使用しています。
背景用の用紙はレイアウトや原画の用紙とは違い絵の具を塗っていくので、厚手の画用紙を使います。スタンダードな大きさのもののほかに、大きなカメラワークがあるカット用に大判の紙も用意しています。
完成した紙に書かれた背景をスキャナで取り込み、フォトショップで最終調整を行うためにパソコンも使います。
いかがだったでしょうか。
今回は美術さんの仕事場を見ていただきました。
次回も美術(背景)編をお送りします。お楽しみに!
スタッフルームだより#7 ※GIF動画差替えました
2015.12.11
こんにちは! スタッフルームだより7回目の今日は「動画編」です。
お送りするのは前回と同じく制作の山本こと、タクちゃんです。よろしくお願いします。
【制作フローチャート】
前回、原画のことを「アニメーションの動きの中のポイントを絵にしたもののこと」と説明しました。「動画」とは「原画と原画」といういわば「点と点」を繋ぐ絵のことを言います。「動画」という名称からして、ムービーデータや実際に動いている映像だと勘違いされがちですが、アニメーション業界で言われる「動画」は原画同様、一枚一枚人間が手を使って描いた絵です。「動いている画」というより「動かすための画」というイメージですね。
【動画】
こちらが動画です。動画は原画に比べて、太さや濃さの均等がとれた綺麗な線で描かれています。動画には原画をトレースして綺麗な線にした「原トレ」と原画と原画を繋ぐ絵である「中割り」があります。
【原トレのみ】※GIFアニメ/画像をクリックしてください。 (2015.12.12 GIF動画の素材を差替えました)
原トレのみだとぎこちないですが……。
【中割りあり】※GIFアニメ/画像をクリックしてください。 (2015.12.12 GIF動画の素材を差替えました)
中割りが入るとスムーズな動きになります。ちなみに、このすずさんの動きには3秒半の間に21枚もの絵が使われています。
【クイックチェッカー】
片渕監督の机の横にあるクイックチェッカーを用いて監督チェックが進められます。
【おまけ】
動画注意事項の表紙にもすずさん。
動画マンを探すのも制作の仕事。スケジュールなどの問題もありますが、極力丁寧な作業をしてくれる人にお願いできるように頑張っています!
次回のスタッフルームだよりは「美術編」です。ご期待あれ!