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映画「この世界の片隅に」公式サイト

ニュース

2015.05.28

日本大学文理学部心理学科教授・医学博士の横田正夫さんから、応援メッセージをいただきました!

『この世界の片隅に』の制作を応援していただいている皆様からの応援コメント第7弾は、日本大学文理学部心理学科教授・医学博士の横田正夫さんです!

 

横田正夫さんコメント

【片渕監督作品の完成が待ち遠しい】

片渕須直監督は良質なアニメーションを作り続ける監督の一人である。彼の作品は心の問題に寄り添う一面がある。

「アリーテ姫」では抑うつ状態に陥ったお姫様が、そこから回復する過程が描かれる。回復するためには食事番という他者との関わりが重要であった。その姫が、抑うつ状態から脱し、まず為したことは自分の為の行動ではなく、他者の為のものであった。そして社会を広く見聞する為に出立する。青年期の若者が、自身の希望に向かって旅立つように。

「マイマイ新子と千年の魔法」では、主人公新子の元気さが、周囲の友だちの心を寛がせ、開放してゆく。ここでも親の死による落ち込みなどの心の問題が扱われ、そうした心の問題からの開放に、新子という他者の存在が重要であった。対人関係がどのように心の成長の為にあり得るのかを考えされる良質な題材となっているし、子どもたちの心情を理解するよい手掛かりともなっている。新子は、多くの仲間に見送られ、引っ越してゆく。こうしてみてくると「アリーテ姫」で、自立する娘を描き、「マイマイ新子と千年の魔法」では年齢的に若返っている主人公ではあるが、自立した個性を持った娘が周囲の仲間と共同して社会を広げてゆくといったように作品の展開ごとに、心の発達が描きこまれているということがわかる。

続けてみてみると心の発達の理解が促される。そうした監督が戦争を描くという。片渕監督の師匠筋に当たる人から「戦争は描けないよ」と言われてしまった彼が、どのような作品を作るのかとても楽しみである。自立した娘が、現実に想定可能な大災害に遭遇し、心身に傷を負った時、どのように立ち直るのか。これは今日的な大変重要なテーマであると思える。

アリーテ姫や新子といった自立した娘が、新たな作品の中で、さらに個性を発展させ、別の姿を借りて現前する。楽しみである。片渕監督作品の完成を待ちたい!

 

■横田正夫

日本大学文理学部心理学科教授、医学博士。日本大学芸術学部映画学科を卒業したのち、臨床心理学の道へ進んだ。宮崎駿、高畑勲、川本喜八郎、今 敏、片渕須直などアニメーション監督と作品との臨床心理学的な関連を調べたり、映画学科池田宏ゼミの後輩に当たる片渕監督らと共同して、アニメーションの作画が作る動きの理論化を考える研究会を開いている。著書に「アニメーションの臨床心理学」「 アニメーションとライフサイクルの心理学」「 日韓アニメーションの心理分析―出会い・交わり・閉じこもり」など。

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